沈む橋を見に行く
2008/11/8 0:00:11 Posted in Note | No Comments »
札幌から、石勝線のキハ40と年代物の夕鉄バスを乗り継いで、その終点に夕張市南部という町がある。
かつては大夕張炭鉱として栄えた町。今は静かな集落で、工事事務所がやけに目立つ。
南部からさらに山側、三笠市方向へ国道452号を行くと見えてくるのが大夕張ダム。
大夕張ダムが水をせき止めてできた人造湖がシューパロ湖で、三弦橋はシューパロ湖を横断する鉄道橋として架けられた。
今、南部では夕張シューパロダム、という新しいダムの建設が進んでいる。夕張シューパロダムは、大夕張ダムの下流に出来る。
大夕張ダムの堤高は67.5m、それに対して夕張シューパロダムは堤高110.6m。
つまり、大夕張ダムは沈んでしまうのだ。ダムの中にダムが沈む。 弦橋も、国道452号の現道も、南部よりさらに奥にあるかつての町も、すべて。
私が鉄道や北海道に興味を持ったのはここ数年で、見たかったものはみんな遺構になっていた。 大夕張ダムと三弦橋ならまだ間に合う。
南部のバス停から、国道452号沿いにひたすらダムを目指して歩く。 小雨の降った後で歩道がぬかるんでいる。黒い泥を踏んでずるりと滑る感じは久しぶりで、普段の暮らしでは滅多にない。東京は土が少ないのだなと妙に当たり前のことを思い知る。
車道の路面はひどく荒れている。工事車両が頻繁に走るからか、自治体の補修資金に乏しいせいかはわからない。
やがて右下の崖の下には工事現場が広がり、遠くに大夕張ダムが見える。
15分も歩くとトンネルまでたどり着く。地図で見ると、トンネルの脇に道があるので、それを使おうと思っていた。しかし現地に行ってみると立入禁止の表示がついていたので、大人しく引き下がる。今は熊の活発な時期だというし。
砂利満載のトラックか頻繁に行きかうトンネルの中は反響音がごうごうと鳴って耳の奥まで揺らし、身がすくむような気持ち。身体の幅ほどの歩道がありはするが、とても頼りない。ハ ンドルを握っている時ならば、親しみすら覚えるオレンジ色の照明が今はどこか恐怖心をあおるように映る。450mちょっとのトンネルが長い。車なら一瞬なのに。遠くに出口はずっと見え続けている。歩いても歩いても近づかない。
思いついて、歌った。 自然に口をついて出たのはZabadakの「旅の途中」
トンネルの塵灰を吸い込みながら一身に歌った。道行きの怖さが調子外れの歌で少しずつ消えていく。
トンネルを抜けると小さな雪が舞っていた。右手に湖面、そして赤錆びた三弦橋。

小さな三角の連なりは、見る位置を変えると様々な表情を見せる。
かつては森林鉄道の鉄道橋として、伐採した木材を満載した列車が渡っていただろう橋。これも水に沈んでしまう。
下手な写真を数枚撮り、来た道を戻った。 トンネルを通り抜けてほっと一息つく。
後ろを振り返ってふと、黄泉比良坂みたいだ、と思った。

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